ミニマム主義で行こう ―スローライフな農業経営―

農業報知新聞に連載中の「スローライフな農業経営」に一部手を加えました。これから
農業を始める人へ、始めようと思っている人へ少しでもお役に立てればと思います。
1-ミニマム主義
 このコラムは「もっと気軽に・多くの人に農家になってもらいたい」という応援メッセージである。実際、新規就農者向けに色々ハウツウ本も多く出てるが、大概は苦労談やつらい話で「かなりな覚悟がないと出来ないよ。」と読んでいるとあきらめたくなるものばかりである。本来クワ1本あれば出来るのが農である。自分で自分の可能性をつぶす必要はどこにもない。

 そしてせっかく農業をやるのであれば、自分の責任で身を立てていく独立農家ほど面白いものはない。しかしこのご時世、一般の仕事でさえ大変なのに、これから独立農家起業なんて「無理、無理、農業経営するのに最初、いくらぐらいかかると思ってんだ。ましてや軌道にのせるなんてどのくらい年月がかかると思ってんだ〜」なんて声が聞こえてきそうである。

 この声はある意味正しい。しかしそれは既存のやり方だからである。既存のやり方とは規模拡大、右肩上がりと、今の経済至上主義につきあったやり方である。徒手空拳で今から農業経営しようというからには今からのやり方がある。しかしそこには明確なビジョンが必要である。そんなやり方のひとつを伝えていければと思う。

 前置きが長くなってしまったが、まずは自己紹介。石川県のとあるところで30aの畑で生計を成り立てている自称日本一小さい農家(認定農業者資格は30aからなので自他共に認めるかな)である。販売品目は無農薬野菜セット、キムチ、無添加漬物、鍋セットなどなどなどである。4年前に独立して去年6月実店舗開店(開店時間10:00〜13:00)というのが現在の状況。売上収入についてはおいおい話そうと思う。

 職歴はバーテン、ホテルの支配人業で文字通り畑違いからの農業参入である。サービス業の視点から見ると農業には可能性が山ほど感じられた。またオースとラリア遊学時代に出会った農家がすべて自信とプライドをもっていたこと。そして農業ほど個人単位で情報発信出来るものはないと確信した事などが農業をやる動機であった。仕事として切り離すのではなく農的暮らしをするというのがベースでありそこから今のようなスタイルが出来上がっていった。

 さてミニマム主義である。これが私の根底であり、この考え方なら独立農家へのハードルがすごく低くなるのではないかと考えている。ミニマム。直訳すると「最小」「最小限の」である。つまりミニマム主義とは小さい農家でいきましょうということである。これは家族経営というのとは意味が全然違う。ミニマムという考え方である。最初からミニマムという考え方と、あわよくば面積拡充なんて考えているのとでは、投資額も違えば効率も変わってくる。

 面積、規模などある程度制限することによって土地活用、時間の効率もアップする。大きな機械を買う必要がないので借金する必要がなくなる。そして地域の人間関係も小さいということでスムーズである。目指すところはコンパクトで万能である。

 つまりミニマム主義とは農的暮らしの良さを最大限に享受しようという考え方である。次回からはその内容について細かく述べていきたいと思う。

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